9月14-16日にかけて、岡山大学で開催された第19回総合学術研究集会(主催:日本科学者会議第19回総合学術研究集会実行委員会)のエクスカーションとして、「ひと・まち・環境について学ぶ水島エコツアー」を17日(月・祝)に開催しました。

当日は、台風の接近に伴い、天候の悪化が心配されましたが、特に問題は無く、研究者の方を中心に9名の参加で実施しました。

9:00 岡山駅西口に集合し、マイクロバスで水島に向かいます。

バスの中では、塩飽が水島の成り立ちから公害の発生、公害裁判とその和解を受けて水島の環境再生・まちづくりに取り組んでいる当財団の活動などについて概要の説明を行いました。

10:10頃 鴨ヶ辻山の展望台から水島地域を展望しました。
水島地域の工場群と住宅地の近さ、北と東を山に囲まれているために南西からの海風に乗った工場からの排煙が滞留しやすいという地形的な特徴、グリーンベルトや集合高煙突などの公害対策の施設を実際に目で見ていただきました。
その後、宇野津、呼松、松江といった地区を実際に走りながら、それぞれの地域でのエピソードを説明しました。

11:00 亀島山花と緑の丘公園に到着し、「亀島山地下工場を語りつぐ会」の上羽修氏に三菱の航空機工場と地下工場の成り立ちや当時の様子などを解説していただきました。


その後、実際に地下工場に入りましたが、ひんやりとしたトンネルの中で、戦時中という状況の中、過酷な労働を強いられた人々(朝鮮からの労働者が多かったそうです)の苦しみに皆さん真剣に耳を傾けていました。

13:00 倉敷市環境学習センターエコライブラリーで、昼食を食べた後、所長の岡本規利氏に、センターの概要について説明をしていただきました。

14:00 磯部作理事による、レクチャー「水島の産業と公害問題に研究者の果たした役割」では、公害闘争でのご自身の体験から誰のための・何のための研究か、ということを常に忘れず研究に取り組んでほしいというお話は、特に若い研究者の方には印象に残ったようでした。


塩飽からは、みずしま財団の活動の中でも、特に海底ゴミの問題について、行政や漁業者との協働の取り組みについて解説をしました。

15:00 患者さんとの懇談では、太田映知倉敷市公害患者と家族の会会長と2名の患者さんから、公害の激しかった当時の様子、裁判闘争の取り組み、現在の生活での問題点などについてお話いただき、そのご参加者と意見交換を行いました。

皆さん、非常に強い関心を持たれ、熱心に質疑応答をされていたので、時間の経つのも忘れてしまうほどでした。

17:30 帰りは、大きな渋滞に巻き込まれることもなく、無事岡山駅西口に到着しました。

今回は、大学の研究者の方が多かったので、行程の途中でも熱心に質問をしてこられて、いつもとは違った雰囲気のツアーとなりました。
ぜひ大学の講義等でも伝えたいとの感想もありましたので、今回のツアーによってより多くに若い人たちに水島の経験が広がっていくことを期待しています。

 

【参加者の感想(一部抜粋)】

・戦争遂行のために命も技術も使い捨てにした地下工場の眼をそむけたくなるような事実、環境学習センターの運営の御苦労や水島地域に深刻な公害被害を生みだした国と大企業、それらの横暴と立ち向かった被害者と医師・科学者の奮闘、裁判の勝利和解をうけて設立されたみずしま財団の密度の濃い活動と隠れた現在の公害である海ゴミ問題、今なお解決できない被害者の健康・不自由な生活実態などなど、すべてが興味深く、日本社会全体の矛盾を考えさせられる問題でした。

・写真やいただいた資料の整理をしながら、非常勤講師をしている大学の学生達にどう伝えるかの検討と、市民講座への応用を模索しております。

・磯部先生が、「誰のための論文か」という問題を提起されているのを聞き、これまでの私の研究は、あくまで、先行研究上の未解明部分を解明したに過ぎず、やはり労働者の暮らしの向上や、日本社会の問題を解決する手段としての社会科学を改めて目指していく必要がある、と考えました。