まもなく東日本大震災・福島原発事故から12年です。水島×福島「2つの公害をむすぶ」取り組みでご一緒している被災者支援団体「ほっと岡山」(https://hot-okayama.net/#)のはっとりいくよさんにお話を聞きました。(聞き手:林美帆・みずしま財団、除本理史・大阪公立大学、2023年2月22日)

「2つの公害をむすぶ」取り組みの一環として昨年7月に実施した水島コンビナートクルーズにて。はっとりさんが手に持っている「みずしま遠足」のボードのデザインはご自身によるもの

―― 3.11から12年がたちますが、岡山県に避難してこられた方々の状況はどうなっていますか。

はっとり: 12年たっても、まだ「避難先に根づいた感じがしない」という不安定な思いを抱いている人もいます。生活再建が困難な人は確実にいて、みなさん本当にそれぞれ難しさを抱えています。コロナ禍もあり、いろいろな糸がからまって、問題が重層的になっています。
原発事故には加害者がいるわけで、避難者はその被害を受けています。しかし岡山県には、福島県外の関東圏からの避難者も多いので、そうした方々は、自分が被害当事者だという感覚をもつのが難しいのかもしれません。そうなると、避難を余儀なくされ元の暮らしを奪われた被害が、自己責任の問題になってしまいます。
私たちは支援活動にあたって、被害当事者が権利回復を訴えるのに、なにも遠慮することはないのだということを理解してもらおうとしています。

―― 公害でも被害者の線引きがあり、「被害者でない」とされた人たちが当事者だと自覚するのは難しいのです。福島原発事故も同じですね。

はっとり: 私は「原発事故は公害だ」と思っているのですが、ピンとこない人も多いみたいですね。

―― 公害は、企業活動と行政の対策不備による環境破壊であり、それによる人権侵害です。そう考えると原発事故も、水俣病や大気汚染と同じ公害ですよね。だから、3.11のあとすぐに、公害に取り組んできた弁護士や研究者が原発事故被害者の支援をはじめたわけです。

はっとり: 水島の公害裁判では、汚染がピークだった時期から提訴まで10年以上たっていますよね。それと比べると、原発事故の集団訴訟がスタートしたのはだいぶ早いです。「12年もたった」というよりは「まだ12年」なのではないでしょうか。
(2023年)3月14日に岡山地裁で、県内に避難してきた方々による福島原発岡山訴訟の判決が出されます。私も傍聴に行きたいと思っています。

―― 福島原発岡山訴訟の弁護団長は、倉敷公害訴訟の事務局長だった石田正也弁護士(みずしま財団理事長)です。「2つの公害」がつながっていますね。
先ほど言われたように「まだ12年」なのですが、政府は被災者支援を収束させる方向に動いていますね。

はっとり: 必要な支援策はぜひ続けてほしいと思います。一方で、私たちのような一般社団法人やNPOが財政的にも自立していくことも大事です。私たちは活動を継続できるよう財政基盤づくりのために、3月14日23時までを期限としてクラウドファンディングに取り組んでいます(https://readyfor.jp/projects/hinan0311)。

―― はっとりさんたちの支援活動は本当に大事だと思います。今後とも「2つの公害」をつなげていくためにも、成功を祈っています。お忙しい中、ありがとうございました。

ほっと岡山交流スペースで地域の方たちとつどう「ぼうさいカフェ」。避難方法や災害対策をその方にあわせて提案したり、過去のさまざまな災害に学ぶカフェです。